- イベントの振り返りにグラレコをどう活かす?
- リアルタイムで描くグラレコのポイントは?
- イベントをグラレコで振り返って気づくこととは?
会議や講演を絵や図で整理するグラレコことグラフィックレコーディング。今回はグラフィッカーとして参加したイベントの振り返りを行いながら、作成したグラレコのポイントをお伝えします。
開催概要
今回、グラフィッカーとして参加したのはインバウンドサミット2022です。まずは本企画の概要をご紹介します。
日時:2022.07.03 sun 13:00~19:00
場所:オンラインと会場のハイブリッド形式
概要:「日本の底力」をテーマにインバウンドについて議論し連帯を作り出す
ホームページには以下のようにも紹介されています。
2020年5月、コロナ禍で先が見えなくなった時期に「今だからこそできるインバウンド観光対策」というFacebookグループが立ち上がりました。約2年で3500名を超す意志がある方が参加。(中略)今年で第3回になるインバウンドサミットのテーマは、「日本の底力」です。観光の枠に囚われない日本が持つ底力、可能性を多様なメンバーによって議論していきます。そして、議論で終わらせずに、より有機的な連携を作り出し、草案をまとめ、日本がとるべき方針をまとめていきます。
インバウンドという軸をもとに、マーケティング・エアライン・食・観光など様々な分野の方が集い、議論し思考を深める時間でした。観光という観点だけにとどまらず、日本が目指すべき先や、世界から見た日本という視点から、様々な議論がかわされました。
インバウンドの未来、ひいては、日本の未来に対して本気で考えている企業、団体、人材が集う場であり、今を生きる私たちが、未来に向けてすべきことについて、改めて考えさせられました。
ここからは、個人的に各講演やセッションごとを振り返りつつ、グラレコのポイントを解説していきます!※感想やまとめについては、個人の見解です。
基調講演
世界から「日本」が選ばれるには(by森岡 毅さん)
株式会社刀代表取締役CEOの森岡毅さんによる基調講演でした。テーマは『世界から「日本」が選ばれるには』です。森岡毅さんは『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』などでも有名な日本を代表するマーケターです。
本基調講演の内容のポイントは、以下です。
- 観光業は「あらゆる人の特徴を活かす稀有な産業」である
- インバウンドは一気に復活する
- 日本には強いブランドの設計・戦略が必要である
これらの内容について、今の日本がどういう状態で、なぜブランド戦略が必要なのか、人の意思決定はどのように行われるのか、といった説明を交えながらのお話でした。日本の未来が”頑張った人が希望が持てる、明日を信じられる”状態になるために、構造・仕組みをつくる必要がある、というお話が心に残っています。モノやお金ではなく、仕組みそのものを残すという点がポイントだなと感じました。
グラレコのポイント
40分という限られた時間のグラレコでした。講演の内容も要点が整理された、まとまりがあるものだったため、なるべくポイントを抑えることに意識を集中しました。
- キーワードは文字で残す
- イベントのテーマカラーを用いる
- 具体例で話された内容はイラストを添えてポイントを思い出すきっかけにする
話の流れを掴みながら何の話をしているのかを正確に掴んでいくことが大切です。話されている内容が、導入なのか、具体例なのか、結論なのか、といった具合に大枠を掴みながら聴くと、グラレコの描きやすさがUPします。
対談
日本の底力(by森岡毅さん・和田浩一さん・青木優さん)
株式会社刀代表取締役CEOの森岡毅さん、観光庁長官の和田浩一さん、株式会社MATCHA代表取締役社長の青木優さん(モデレーター)の3名による対談でした。日本は観光的に魅力はある一方、ひと言で「これ!」と言えるブランドが弱いのでは?という話がありました。また、観光を伸ばすことがより大きい範囲の幸福につながるという話が印象的でした。
本対談のポイントは以下です。
- 観光産業において、強いブランド戦略が必要である
- 観光産業は、広い範囲の幸福につながるため、戦略的にも伸ばすべきである
- 観光産業を支え、引っ張っていくリーダー育成のために構造、仕組みをつくる
民間企業だけではなく、国全体として日本の観光産業を盛り上げていく必要があるという話が心に残っています。自分やその周囲という小さい範囲にとどまらず、より大きなものの未来や幸福について語られている姿を見て、私も何かしたい!という思いが溢れました。
グラレコのポイント
本対談は、基調講演の内容を踏まえた上で、さらに議論を展開し、深めていくという流れでした。そのため、基調講演で話されていた内容を受けて、どの話がポイントになりそうなのかを意識しながらグラレコを作成していきました。
- 前後で講演の内容がつながっている場合は、何がポイントとなるのかを見極める
- 誰の意見か、ではなく、何が話されたのかを残す
- 矢印を用いて、会話が左から右に流れていく様子を表す
予め、用紙を縦3分割にしておくと、残り時間と空白スペースのバランスを考えながら描くことができるのでおすすめです。左から右に対話が進んでいく様子を表しやすくなります。
テーマ別セッション ターム1
エアラインの進化を通じて、地方創生をどう実現するか
JTIC.SWISS代表山田桂一郎さん、日本航空常務執行役員越智健一郎さん、国土交通省航空局長久保田雅晴さん、東京女子大学副学長矢ケ崎紀子さん、の4名によるトークセッションでした。
本トークセッションのポイントは以下です。
- 地方と連携し、移動手段にとどまらない価値の創出
- その地域ならではの魅力を安売りしない
- ビジネスと地方をかけ合わせ、持続可能な社会貢献を行う
移動手段としてのエアラインという位置づけを超えて、地方と連携することで「移動」の価値をさらに高めるという点が興味深かったです。ボランティアとしてではなくビジネスとして社会貢献を行う仕組みをつくることで、持続可能な状態を目指せるという点も魅力的でした。また「人生で1回は食べてみたい」という欲求を見つけに行くことや、安売りしないという点は、あまり認知されていない価値を再発見するというプロセスのように感じ、とても印象的でした。
グラレコのポイント
どのように話が展開されていくのか予測できないトークセッションだったため、話されている内容単位でまとめることを意識しました。
- 話の内容ごとにまとまりをつくる
- まとまり同士の関係性に着目する(因果関係?掛け算?)
- 季節に応じたその土地ならではのイラストを添えると地方感が増す
緑と黄色を中心に描いていたので、アクセントとして赤色を使ってみました。使う色の種類や濃さについては好み次第ではありますが、2~4色におさめられると丁度良いかなと思います。
テーマ別セッション ターム2
日本の食、海外でどう闘うか
味の素株式会社特別顧問の西井孝明さん、農林水産省畜産局総務課長 / 元食文化・市場開拓課長の西経子さん、立命館大学食マネジメント学部 教授の井澤裕司さん、大森海岸 松乃鮨 四代目の手塚良則さんの4名によるトークセッションでした。
本トークセッションのポイントは以下です。
- 日本食は世界からどう思われている?
- データで示すこと、伝えること、伝わることが大切
- 食を科学する
「食」というとても身近で広いテーマに対して、世界から見る日本食についてや、データを用いてどう「よい」と伝えていくのか、についての話がされていました。日本食は健康的なイメージがありますが、何が具体的に良いのかを、見えるものとして、伝わる状態にすることも大切なのだと感じました。
グラレコのポイント
抽象度の高い言葉をいかに簡単なイラストに落とし込むのか、がポイントです。
- 「季節・たべもの・地方」は様々なテーマとの関連性が高いので練習しておく
- すべてを記そうとせず、あくまでも要点だけを描く
- 文字の大きさをなるべく揃える
文字の大きさを揃えるにあたっては、描く際に描画ガイドをつけると枠線が表示されるのでおすすめです。
テーマ別セッション ターム3
日本の観光を変革する「トランスフォーマティブ・トラベル」の可能性 – partnership with アップサイクル TOCHIGI
XPJP代表取締役 価値デザイナーの渡邉賢一さん、Transformative Japanエクスペリエンス・デザイナーのニコラ・ブゼさん、JapanExperienceエクスペリエンス・マネージャのダコスタ・レティシアさん、東武鉄道観光事業推進部長の青柳健司の4名によるトークセッションでした。
本トークセッションのポイントは以下です。
- 自然や社会の変化に伴って、旅の形も変わっていく
- 体験の前後もあわせてデザインしていく
- ストーリーや意味が重視されるようになる
時代に応じて、旅に求めることも旅が持つ意味も変わっていくというお話が印象的です。個人的には、旅中での経験そのものよりも、その経験を経た後の旅から帰った後の日常が好きだなと思います。
グラレコのポイント
今回は時間の流れや、関連性があるものについての描き方を工夫しました。
- 矢印をうまく活用し、時間の流れや関連性を示す
- 数式と絵を組み合わせてみる
- 珍しいがポイントとなるような単語もしっかり描いておく
グラレコをしていると、どうしても自分が分かる内容や理解できる内容を重点的に描いてしまうことが多いです。参加者や登壇者が後から見返して、調べ直せるようにするためにも、なるべくフラットに描くことが大切です。
まとめ
長時間に渡り濃密なセッションが盛りだくさんのサミットでした。長時間かつ連続でグラレコを作成する場合、体力や集中力の配分も大切になってきます。ポイントを抑えたものを作成できる力の重要度が増しますね。
グラレコを、その場限りのものにせず、後から見返したり対話のきっかけにしたり、登壇者へのお礼としてお渡ししたりと様々な活用をすることも大切です。これからも、たのしい時間を創っていけますように!
エンディングにて、完成したグラレコを表示してくださりました!
会場のセッションは終わりました!長時間にわたりご協力、ご参加ありがとうございました。
日本のインバウンド、これからはもっともっともっと!みんなで盛り上げましょう🔥#インバウンドサミット でみなさんの感想お待ちしております! pic.twitter.com/iFiA8biZSK
— 🟢 MATCHA Inc. (@MATCHA_inc) July 2, 2022